グループ会社の繰越欠損金を合併で使うルールとノウハウ

合併で繰越欠損金を使うルールとノウハウ

会社合併というと大規模なM&Aを思い浮かべるかもしれませんが、世の中で行われている合併の大半が企業グループ内部での親子会社や兄弟会社の統合です。そして、「赤字会社の繰越欠損金をどう使うか?」ということは、現実的なテーマとしてよく見受けられます。

そのため、合併による繰越欠損金の引継・利用ルールと、「どうすれば税務リスクを下げられるか?」というご質問は、非常によく伺うところです。そこで今回は、税務ルールの概要と、弊事務所がお客様にご提供している、より「安全に」グループ会社の繰越欠損金を活用するノウハウをご紹介します。

 

〔目次〕

合併による繰越欠損金の活用ルール

同じ合併でも、繰越欠損金を引継げる合併と引継げない合併、そして一定の制限が課せられる合併が存在します。まずはルールの概要を確認しておきましょう。

引継可能なのは適格合併だけ

法人税法では、合併を「適格合併」と「非適格合併」に分類し、異なる税務上の取り扱いを定めています。

消滅する会社の繰越欠損金を存続会社で使うことができるのは「適格合併」に限られ、非適格合併の場合は繰越欠損金は消滅します。

どのような合併が適格合併になるかは以下のリンク先をご覧ください。

適格合併の要件

買収前の繰越欠損金は△

M&Aで赤字の会社を買ってきた場合、基本的には買収前に存在していた繰越欠損金は使えません(例外ケースは後述)。

ただしこの場合であっても、買収後に発生した繰越欠損金は原則使うことができます。(特定資産譲渡等損失によるものを除く)

法制度の趣旨としては、「繰越欠損金を目当てにしたM&A・合併は不当な税逃れであるため認めない」というスタンスであり、この点は比較的厳しく判断されます。

ただし、以下のようなケースで「繰越欠損金目当てのM&A・合併ではない」と判断されれば、消滅会社の繰越欠損金をすべて使うことができます。

買収前の繰越欠損金が使えるケース

買収前の繰越欠損金が制限なく使えるケースとは、以下の要件を満たし、「繰越欠損金を目当てにしたM&A・合併ではない」と判断される場合です。具体的には以下でご説明しますが、より詳細な内容は「繰越欠損金の引継制限」のページをご覧ください。

ただし後述のように、経済実態としては繰越欠損金目当てであることが明らかなのに、不自然・不合理な手続きで形式的に要件を満たしている場合は、税務調査で「包括否認」をされるリスクが高いので注意しましょう。包括否認の内容と対策については、「組織再編で「節税」が包括否認される4つの要件基準と対策」で詳しく解説しております。

買収の5年超で合併する場合

法ルールとして、買収後5年を経過した後に合併をした場合は、繰越欠損金の全額を取り込むことが可能です。これは、「繰越欠損金目当ての買収であれば買収後すぐに合併するはずだから、5年も持っているなら、繰越欠損金目当てとは言えないだろう」という判断によるものです。

したがって、買収後すぐに事業を廃止して5年間寝かせてから合併するような場合には、その行動の合理性の説明が求められるでしょう。

「共同事業要件」「みなし共同事業要件」を満たす場合

「共同事業」とは、合併の存続会社と消滅会社が「対等の関係」で合併するケースです。

これには細かい要件が課されており、要件を満たすか否かの確認は専門の税理士と慎重に行ってほしいのですが、たとえば以下のような場合に満たされます。

  • ・存続会社と消滅会社の規模(売上高、従業者数、資本金のいずれか)の差が5倍以内
  • ・消滅会社の経営幹部が合併後に新会社の幹部になる

 

当然こちらも実態がなければいけません。買収した会社の元社長を名ばかり副社長にして取締役会にも呼ばないようでは、税務否認のリスクは高まります。

要注意!こんな合併は税務否認される

上記のような要件を形式的に満たしても、税務調査で実態判断をされて税務否認を受ける場合があります。たとえば節税以外の経済合理性に乏しい場合、税務否認を受ける可能性があります。

節税以外の経済合理性に乏しい合併

節税以外の経済合理性に乏しい合併を行った場合、税務調査でその目的・理由を求められることがあります。たとえば以下のようなケースです。

  • ・事業を廃止した後で唐突に合併する
  • ・合併したら債務超過になるのに、合併する
  • ・買収した会社を5年間放置してから合併する
  • ・買収・合併の直前にある程度の増減資をして、資本金の差を5倍以内にする
  • ・買収の直前に役員を入れ替える

 

上記はいずれも繰越欠損金の引継要件を満たしますので、形式的には引継が可能な場合が多いです。

しかし、税務調査でヒアリングや資料閲覧を行った結果、税務調査官が「これは不自然・不合理な行為であり、繰越欠損金利用を主目的とした合併である」と判断した場合には、税務否認される可能性が高いと言えます。

無用な税務否認を受けないためのポイント

上述のとおり、繰越欠損金を目的として不自然・不合理な合併を行うことは、税務否認のリスクが高いためお勧めできません。

しかし、繰越欠損金を持っている会社との合併を検討する場合、「節税」が判断要素の1つになることは当然です。

また、「不自然・不合理」の定義は曖昧です。税務調査官は個々のビジネスの特性に精通しているわけではない一方、会社サイドが知りえない他社の情報を持っていますので、会社が自然と思っていても、税務調査官は不自然と感じることもあります。

認識が相違する場合、以下のように議論していく必要があります。(より詳しくは「組織再編で「節税」が包括否認される4つの要件基準と対策」をご覧ください)

不自然・不合理な合併ではないと主張する

形式的に引継要件を満たしている合併の場合、税務調査においてそれを否認するためには、その合併が「不自然・不合理」なものではないことを主張する必要があります。

「不自然・不合理な合併」とは、「税負担を減らす以外の目的に乏しい合併」ということになります。

したがって、「この合併は税負担軽減以外にこんなメリットがあり、デメリットを上回っている」ということを、理路整然と主張していきましょう。

繰越欠損金を持っている会社は、多額の借金を背負う債務超過会社であることが多いですし、事業を廃止済みということもあります。そのような場合は税務調査官も怪しみますので、なぜ合併を選択したのかを、繰越欠損金以外の理由できちんと説明できるようにしておきましょう。

もちろん、取ってつけたような理由は逆効果ですので注意が必要です。

主張の裏付けを取り纏めておく

税務以外の合併のメリットも、ただ口で言っているだけでは怪しまれるだけです。主張を裏付ける資料(たとえば取締役会の議事録、コンサルタントの提案書など)を整えておき、税務調査で資料を見せながら説明できるようにしておきましょう。

税務調査官に主張をしっかり理解してもらう

税務調査は、調査官が納得しなければ終わりません。妙な尻尾を出したくない気持ちもわかりますが、曖昧な説明や資料提出の遅延は税務調査官の疑いを強めるだけです。

やましいところがなければ、会社の考えを税務調査官に堂々と主張しましょう。議論の第一歩は認識の一致です。なぜ繰越欠損金を引継げると判断したのかをしっかりと説明し、税務調査官をミスリードさせないようにしましょう。

税務否認リスクを下げる実践ノウハウ

制度上、税務署長が「これは不当な税逃れである」と判断すれば、税務否認を行えるようになっています(その後不服審判や裁判に展開させることは可能ですが)。是非はともかく、個々の税務調査官の心証に委ねられていることは否めず、税務否認のリスクを完全にゼロにすることはできません。

しかし、上述のように納税者の主張を理路整然と説明すれば、税務調査官はそれを論破しない限り税務否認できませんので、準備不足から無用な税務否認を受けるリスクを下げていくことができます。

以下では、弊事務所がクライアント様にご提供している、税務否認リスクを下げるノウハウをご紹介します。

裏付けとなる資料を整理する

議事録、契約書、コンサルタントの報告書など、主張の裏付けとなる資料はしっかりまとめておき、税務調査で求められたらすぐに出せるようにしておきましょう。

一般に、資料(証憑)が整理されているだけで、税務調査官の心証はよくなると言われます。

税務意見書で理論武装する

税務意見書とは、個別の事例に対する税務上の取り扱いについて、専門家が理路整然と意見を表明する論文のようなものです。

弊事務所では、条文やその一般的な解釈を踏まえた法論理の観点から、なぜ繰越欠損金が使えると判断できるか、なぜ税務否認されるべきではないかについて、意見書という形で提出させていただいております。

税務意見書は、それによって税務否認を受けないことを保証するものではありません。

ただし税務調査で否認するためには、この税務意見書を論破する必要があります。何より納税者の主張を税務調査官にきちんと理解してもらうことができます。

適切な税務申告を行う

最後に、基本中の基本ですが、適切な税務申告を行いましょう。

組織再編の税務申告は非常に特殊・複雑で、付表の提出なども求められているため、そのような経験が豊富な税理士でなければ、間違えてしまうことも少なくありません。

申告ミスが直ちに税務否認につながるわけではありませんが、1つ間違いがあると他も間違っているのではないかと思うのが人の性です。ミスのないしっかりした税務申告を行い、税務調査官に隙を見せないようにしておきましょう。

おわりに

今回は合併で繰越欠損金を取り込む際のルールと、税務否認リスクを下げる弊事務所のノウハウについてご説明させていただきました。

弊事務所では、税務否認リスクを下げるためにぜひやっておくべき準備について、具体的にご案内・ご支援させていただいております。ご相談は無料で受け付けておりますので、少しでも不安を感じる際はお気軽にご連絡ください。

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