経営相談に役立つ【合併】の22のメリットとデメリット

合併のメリットデメリット

はじめに

グループ経営では、法人格を統合するのか、別会社として運用するのかは、経営者にとって悩ましい問題です。

そんなとき相談したいのが、身近な外部専門家である顧問税理士です。経営に密着した先生には、税務面のみならず、組織運営も含めた現場目線での経営全般のアドバイスが求められます。

そこで今回は、税理士が知っておくとアドバイスで役に立つ合併のメリットとデメリットをまとめました。私自身、上場会社の経営企画室にてグループ組織戦略に携わり、M&Aや組織再編の現場管理を担ってきました。その現場目線で培った私見を、以下の3つの視点に分けてご紹介したいと思います。

ぜひ、先生方のアドバイザリーサービスの参考にしていただき、クライアント様の発展にご活用ください。

[今回考える3つの視点]

▶1.組織運営面から見たメリットとデメリット

▶2.税務面から見たメリットとデメリット

▶3.財務・会計面から見たメリットとデメリット

1.組織運営面から見たメリットとデメリット

1-1.組織運営面のメリット

1-1-1.組織のシンプル化

複数の会社間で取引をやりとりする場合、情報共有や連携をする際に何かと手数が生じます。各社が顧客を奪い合うために交際費を使ったり、会社間取引の価格交渉が過剰になって、会社間格差が生まれることもあります。

合併によって組織の仕組みをシンプルにすれば、作業や連携の際の無駄がなくなり、より全体最適でスムーズな組織を目指すことができます。

1-1-2.企業文化の融合が加速

M&Aで買収してきた会社はもちろんのこと、長く別組織として運用されてきた会社というものは、必ず別の文化が醸成されるものです。

両方の会社が優れた文化を持っている場合は、この違いがメリットのこともあるため、無理に融合させることはないでしょう。一方、片方だけが優れている場合は、合併によって優れた文化に寄せていくことが可能になります。

1-1-3.仲間意識の強化

従業員さんたちにとって、同じグループでも別会社の人というのは、どこか一線を感じてしまうものです。これはたとえ同じ場所で机を並べて仕事をしていても同様です。また、それぞれの損益状況やグループ化の経緯などで、どこか優劣を覚えてしまうのも仕方のないことです。

合併によって組織の壁を取り払うと、比較的仲間意識の醸成も早く、一体感の強化を図ることができます。

1-1-4.内部統制の促進

グループ化すると、たとえ別会社であっても、各社の社内ルールを調整する必要が生じます。合併となるとこの必要性はずっと大きくなります。この社内ルールの融合と浸透は、合併のハードルではありますが、一方で一定期間内に適切な内部統制を確立しなければならないという圧力になり、全社一体となって取り組む力になります。

1-1-5.重複部門・余剰人員のスリム化

経理や総務などの管理部門は、合併することで効率化が図れ、スリムダウンしていくことができます。また、生産キャパ維持のための余剰人員なども減らしていくことができます。

1-1-6.事業承継の準備として

事業承継では、会社をなるべく綺麗にまとめておいたほうが、スムーズなバトンタッチができます。最近ではその目的で組織改革を行うオーナーも多く、手段として合併も多く選ばれています。

1-2.組織運営面のデメリット

1-2-1.社内ルール統合の手数・リスク

合併してしまうと、社内ルールを相当程度統一する必要が生じます。報告ルール、人事考課、資金管理、システムへの対応など、非常にたくさんのタスクを短期間にこなしていく必要があります。また、異なるビジネスを営む会社同士の場合、個々の事業の状況に合わせたルールのすり合わせが必要です。

不慣れな会社であれば、一気に統合しようとせず、別会社の関係からゆっくり最適な統合を目指すのも手段のひとつでしょう。

1-2-2.従業員の不安・ストレス

吸収消滅会社の従業員さんにとって、会社がなくなり別会社に編入されるというのは、相当な不安感とストレスをもたらします。屈辱感を覚える人もいますし、ちょっとした用語や慣習の違いもストレスになります。最悪の場合、従業員の大量退職を招き、事業が成り立たなくなることすらあります。

これを防ぐためには、経営者自らが合併の意味や戦略、従業員の今後の処遇を語るとともに、存続会社の社員が配慮するよう働きかけることが大切です。

1-2-3.人件費の上昇

多くの場合、合併する2社間の給与水準には無視できない差があり、合併に当たって給与水準を統一します。ほとんどの場合、低い方の給与水準を高い方に段階的に引き上げることが多いでしょう。

これにより、全体の給与水準が引き上がることが一般的です。合併したからといってすぐに合理化できるわけではないので、少なくとも短期的には人件費が増加すると考えるべきです。

1-2-4.対外関係・許認可関係の整理

合併では権利義務が包括承継されますので、思わしくない簿外負債や契約関係も合併法人に取り込まれてしまいます。この点はM&Aの際にデュー・デリジェンスをしっかりやって、リスクを低減していく必要があります。

また、すべての権利義務が自動で取り込まれるといっても、実際の実務としては銀行や取引先に挨拶し、必要に応じて契約書を巻き直すことになります。したがって、合併前後は大変忙しくなりますので、計画的に準備しておく必要があります。

さらに、営業許認可は吸収合併消滅により取り直しになることも多く、事前にきちんと調べて、違法状態が発生しないように気を付けましょう。

2.税務面から見たメリットとデメリット

2-1.税務面のメリット

2-1-1.損益通算が可能

連結納税を選択している場合を除き、黒字会社の利益と赤字会社の損失を相殺して節税することはできません。しかし合併すると法人格が同一になるため、損益通算による節税が可能になります。

2-1-2.繰越欠損金の引継ぎ

適格合併の場合、繰越欠損金を引き継ぎ、黒字事業の利益と相殺することができます。赤字会社だけでは繰越欠損金を使いきれない場合には大変メリットがあります。

ただし、外部から買収した会社の繰越欠損金を使うのは租税回避行為と見られる恐れがあります。引継制限規定については、以下のリンクをご参照ください。

繰越欠損金の引継制限

2-1-3.相続税等の株価引き下げ効果

合併によって相続税上の株価が引き下がることがあります。株価が変動する理由は様々ですが、たとえば、

  • ・損益通算による利益水準の圧縮
  • ・会社規模区分の変更による有利な評価方式の適用
  • 抱合せ株式消滅による純資産圧縮効果

などによって株価が下がることがあります。

実際に計算してみないとわからないところではありますが、有料付帯サービスとして提供している税理士さんも多いようです。

2-1-4.消費税負担額の節税効果

調剤薬局など、課税売上割合の低い事業を営む会社が、課税売上割合の高い事業を営む大きな会社と合併すると、消費税の仕入税額控除の割合が大幅に広がり、大きな節税をすることができます。

2-2.税務面のデメリット

2-2-1.繰越欠損金・特定資産譲渡等損失の制限

一定の場合に、繰越欠損金が消滅する場合があります。また、うっかり特定資産譲渡等損失制限の規定に引っかかってしまい、損をすることもあります。制度の詳細は以下のリンクをご参照ください。

繰越欠損金の引継制限

繰越欠損金の利用制限

特定資産譲渡等損失

2-2-2.相続税等の株価への影響

相続税における税務上の株価評価については、下がることもあれば上がることもあります。過去実績や将来計画から株価をシミュレーションし、どの程度の影響なのか検討していきましょう。

2-2-3.各種節税策の不適用

簡易課税など、小規模事業者にのみ認められた節税が、合併により規模が大きくなることで認められなくなるといったことも起こりえます。多くの場合は重大な問題にはなりませんが、顧問税理士さんがしっかり気を配ってあげましょう。

3.財務・会計面から見たメリットとデメリット

3-1.財務・会計面のメリット

3-1-1.資金管理が簡単

会社を別会社にしている場合、資金を融通し合う際に色々面倒が発生します。100%支配の会社間で資金を送るだけでも、貸付、寄付、配当、経営指導料、出向者派遣料など、資金を送る名目を考えなくてはなりません。

合併すると社内でお金を回すだけですから、何の名目も必要ありません。支払口座を統一して、そもそも資金移動が発生しないようにすることも可能です。

3-1-2.対外信用力の強化

小さな会社よりも大きな会社の一部であるほうが信用力が増し、資金調達やビジネス面で有利になることが多いです。

これは大きな会社の傘下に入るだけでも効果がありますが、合併によりさらに有利に働きます。

3-1-3.管理会計導入のチャンス

合併すると細かい単位での決算書を作らなくてよいため、ややもすると各事業の業績管理が不十分になりがちです。

そこで、事業部門別損益計算を導入し、役職員の業績責任を明確にすることができます。管理会計導入は手間がかかりますが、自由度が高く有用であるため、全社一丸となって導入する際のいいチャンスとなります。

3-2.財務・会計面のデメリット

3-2-1.業績管理が曖昧に

上述のとおり、法人格がなくなると事業別の業績が見えづらくなります。この機会に事業部門別損益計算を導入し、業績を把握していきましょう。

この際、無理に高度な管理会計理論を導入する必要はありません。まずは従来の財務会計をベースとした部門損益計算を行いながら、少しずつ現場が使いやすい改良を加えていくだけでも、効果は絶大です。

3-2-2.個別決算書へのインパクト

連結決算を組んでいる場合は大きな影響はありませんが、個別決算書にのれんが取り込まれ、のれん償却によって営業利益が減少します。のれん償却は税務上損金にはなりません。詳しくは以下のページをご参照ください。

資産調整勘定(税務上ののれん)

おわりに

上記において、①組織運営面、②税務面、③財務・会計面の3つの視点でメリットとデメリットを解説しました。

上記3つの視点はいずれも重要ですが、もっとも重要なのが①組織運営面です。

税理士としては、つい税務面ばかり目が行きがちですが、税務ばかりに目を捉われて強引な組織再編を行うと、社内の大混乱や大量退職を招いてしまう恐れがあります。

外部専門家にとって、なかなか社内の事情を把握することは難しいですが、社長さんや役職者の方に留意すべきポイントをアドバイスし、総合的な検討ができるように促してあげましょう。

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